妹尾 ゆふ子『翼の帰る処2 鏡の中の空 上』
妹尾 ゆふ子『翼の帰る処2-鏡の中の空 上』(幻冬舎コミックス 幻狼ファンタジアノベルス ,2009-07,945円, ISBN978-434481707-4)読了。
あー、面白かった。堪能しました。しかし、いいところで「続く」なんですね。表紙のジェイサルド爺がかっこええ。この構図だとヤエトはヒロインポジション……。
翼の帰る処〈2〉鏡の中の空〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス) | |
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北嶺で北方民族との戦いの復興作業に取り組んでいたヤエトのもとへ、北嶺が郡から国に格上げされ、ヤエト自身も貴族に叙任されるという「悪いしらせ」がもたらされる。新年祭のため、皇女とともに渋々帝都へ向かったヤエトを待っていたのは、さらにやっかいな事態だった……。
真上皇帝陛下の「いじめ」は、的確かつ効果的ですな。ヤエトが嫌がり且つ帝国と皇女にとっては最も有用な手を打ってくる。
前作を再読しながら、ヤエトと皇女が出会ったのは偶然か否かについて考えていました。
ルーギンが皇女殿下の部下を辞めなかったいきさつとや皇帝陛下のやり方を考えるに、仕組まれてたんでしょうねぇ。
多分、ヤエトは大事な姫君に一番手を出しそうもない奴としてリストアップされたんだろうと思います。万が一何かあっても、家名を持たないから結婚を申し出る心配はないし、邪魔になって殺しても面倒な親類縁者がいなくてあとくされないし。
でもまさか皇帝陛下も、副官に任命したヤエトが皇女を「たぶらかした」あげく、その魂と命を救ってしまい、殺すわけにもいかないほど重要な存在になるとは思ってもみなかったでしょう。
でもヤエトって、従わせようと思ったら、本当に厄介な相手ですからね。
金にも色にも地位にも名誉にも興味がなくて、自分の命も惜しまないし、人質にできる係累もいないし、正論吐いて逆らうし、他人にあまり興味はなさそうなのに妙に人望はあるし。
皇帝陛下がいじめっ子になるのも無理はない(苦笑)……と思いました。
なんだかんだいっても一度視界に入った人間は見捨てられないヤエトの性格を見抜いて、勝手に死んだりできないぐらいにいろいろ背負わせてしまおうというのが、皇帝陛下の作戦だと思います。これで皇女と何かあっても、責任をとらせることもできますしね。
皇女と同じく皇帝もヤエトのことをよく理解しているのではないかと思いました。
そして今回もジェイサルドかっこいい! ヤエトに剣を捧げる挿絵にどきどきしました。
ジェイサルドは、万事にそつなく抜かりなく気が回り、腕も立てば呪術もこなし、めったなことでは死なないほど頑丈。「あくまで執事」も顔負けの万能執事兼騎士ぶりです。すばらしい。これでヤエトの負担も少しは軽減されるでしょうか。
ジェイサルドは、誰か人外の存在(黒髪の詩人とか)に名前を与えられたのかと思っていたのですが、逆だったのですね。(ある意味では与えられたといってもいいのかもしれませんけれど)
彼の新しい名前が下巻でどういう役割を持つのか楽しみです。
そして本気だせば十分黒いヤエトもかっこいい! 代官のスラジャを脅しつけているイラストが、これまたかっこいい。
前作でナグウィンを説得したときもちらりと「黒さ」が出ていましたが、その気になればいくらでも冷酷かつ狡猾に振舞えるんですね。意外に敵に回すと怖い相手。ヤエトを左遷した人たちとか、彼を本気で怒らせるようなことをしなくてよかったですね。
そして、セルクの「天然劇場」に大笑い。セルクって、あれで北嶺じゃ良いとこの坊ちゃんなのに。良いとこの坊ちゃんだから、ああなのか。都の奥様方の間でセルクがどのような評価を受けたのかが気になります。案外都じゃ珍しいタイプだから、「一途でいらっしゃる~」と好評かも。
しかし、あそこで続くですか? これからが一番美味しそうな場面なのに、1ヶ月おあずけなのですね。
個人的にはあそこでスーリヤが登場して修羅場フラグが立つのが見たかったり……。
妹尾せんせいのあとがきは面白いので、あとがき書きたくないとか言わず、毎回載せてほしいと思いました。下巻は「作者本人もびっくりの展開」だそうなので、楽しみです。
今回は真帝国の内情の説明がメインで、あまりファンタジーっぽくはありませんが、冒頭にああいう予言をもってきて、ジェイサルドの名前の秘密も明かされたので、きっと下巻では本当にびっくりするような展開が待っているに違いないです。
前作だって、上巻を読んで「ああ、今回はキャラクターメインであまりファンタジーじゃないんだ」と思っていたら、下巻に入って怒涛のファンタジー展開でしたから。
(Alisato's 本買い日誌に載せたものですが、
感想を募集している作者BLOG 積読山脈造山中: 翼の帰る処 2 鏡の中の空(上)へTrackBackを送るため、こちらにも転載しました)
オマケ
真上皇帝の皇子たち
第一皇子 27歳 沃野国 ……母は元女官の貴妃ラハーマ。
第二皇子 24歳 博砂国 ……母は前銀鷲公の娘シーリン姫(故人)
第三皇子 ??歳 中州の砦 ……母は皇女と同じ
第四皇子 17歳 東の草原地帯 ……母は白羊公の一門の出。第五皇子とは双子。武力馬鹿
第五皇子 17歳 東の草原地帯 ……母は白羊公の一門の出。第四皇子とは双子。
第六皇子 16歳 都の向こう岸の平野 ……母はラングールの藩主の娘
第七皇子 15歳 沿海の国 ……母は白羊公の一門の出。第四、第五皇子と同腹
第一皇女 15歳 北嶺国 ……母は第三皇子と同じ
四大公家
銀鷲公
金獅子公
灰熊公
黒狼公
十二大公家
四大公家
白羊公
赤犬公
……残りの6公家はまだ出てこない
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