妹尾ゆふ子『翼の帰る処 下』
妹尾ゆふ子『翼の帰る処 下』(幻冬舎コミックス 幻狼FANTASIA NOVELS ,2008年11月,945円, ISBN978-434481493-6)読了。
前の巻に対するミーハーな感想は、2008/11/15。
療養を名目に皇女から帝国主都での情報収集を命じられたヤエト。だが彼はそこで皇女に陰謀の魔の手が迫っていることを知る。皇女を救うべく、ヤエトは皇妹の護衛であったジェイサルドとともに北嶺へと向かう……。
皇女殿下と主人公の仲は進展したかしらと本を開いてみたら、いきなりヤエトが皇女から離れて南方に向かっていてびっくりですよ。
ゴタゴタはあっても基本的にのんびりしていた北嶺と違い、帝国主都に漂うのは陰謀の気配。そして事件は起こり、物語はダイナミックに展開します。まさかタイトルの示す意味がそういうことであったとは……。
今回はファンタジー度が低めかなと思ったらとんでもない、いかにも妹尾流の本格ファンタジーでありました。
虚弱な主人公は今回もコロコロと倒れつつも頑張ります。その主人公にほだされて、世話を焼く周りのおじさんたちがいい味だしてます。主人公プラス二人のおっさんの旅の会話がたいへんに楽しい。トリオ漫才?
小道具の使い方も印象的でした。角灯とか食べ物とか。
第三皇子のところにいた伝達官のおじさんも好きでした。……本当に残念です。
そして意外に世話焼きだった美老人のジェイサルドさんが素敵です。ヤエトに「名明し」のことを語っていますが、彼は誰かに名を明かされたのかもしれないと思いました。あの世界にはそれが出来そうな人外の存在がうろうろしてますからね。黒い髪の詩人とか、少年の姿をした神とか。
で、私が期待したロマンス度はといいますと……うーん……。なにしろ主人公が素晴らしく鈍感なので……。周りの人は全員分かっているし、皇女殿下だって思いっきり告ってるってのにねぇ。あそこまで鈍感だと、無意識のうちに「気がつかない」ようにしてるんじゃないかという気がしてきます。
続編があるそうですが、二人の関係がどうなるのかが気になります。
ただ皇女とヤエトの間にあるものは、単なるロマンスとは違う種類のもののような気がします。恋愛でなく友情でなく忠誠でなく、でもそれらを全て含む絆。「翼臣」という言葉を口にした皇女が求めるのは、そういったものだと思います。
下巻になってからはヤエトを慕う召使の少女なんてのも登場し、普通のライトノベルなら「これはハーレム化フラグか!?」と思うところですが、なにしろ妹尾ゆふ子の小説ですからねぇ……。
とても楽しめた作品なので、早く続きが読みたいです。
作者の妹尾さん、編集の内田さん、がんばって早く出してくださいね!!
(Alisato's 本買い日誌に載せたものですが、感想を募集している作者BLOG 積読山脈造山中: 翼の帰る処(下)へTrackBackが送れないので、こちらにも転載しました)
翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2) | |
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