若竹七海『遺品』
若竹七海『遺品』(角川ホラー文庫)読了。
紹介
女優であり作家でもあった曾根繭子。金沢のホテルのオーナーが収集した彼女の遺品のコレクションの整理のため、職を失い、恋人とも別れた学芸員の女性がであう怪異の数々……。
感想
死んだ女流作家をめぐる話という枠組みは恩田陸『木曜組曲』[→感想]と同じですが、女性ばかりが登場してどこか爽やかな印象の恩田作品に比べると、男性(というか支配しようとする者)のいやらしさ卑小さが目立って、なんというかイヤーンな感じ。登場人物たちの口調にも少々ひっかかるものを感じました。わざとらしいというか不自然な感じがして。
あ、つまらなくはないです。最後まで読ませます。私はこのラストは好きじゃないけど。
ホラーですが、怖くないです。いろいろ怪異は起るんですが、少なくとも私には怖くなかったです。
作者が一番書きたかったのが超自然的な恐怖ではない(ように思える)ので、別にいいんでしょうけど。
どうもラストに違和感を感じて仕方がなかったのですが、しばし考えてその理由が判明。
登場人物の性格とあのラストが合わないんです。作者自らが「竹を割ったような」(『このミス2000』)と語っているヒロインが、あんなところに安住していられるとは思えない。鏡なんか蹴り割りそうなのに。
もう一人の女性についても同様。ラストでああいう台詞を吐くような女性が、黙って「アレ」の言うなりになっていると思う? 反撃に出そうなもんなのに。
あのラストにはあのラストにふさわしい内向的なヒロインが必要だし、もしヒロインの性格がああいう風ならば、ラストは違ったものがふさわしかったと思います。
書誌情報
書名:『遺品』
著者:若竹 七海
書誌:(角川書店 角川ホラー文庫,1999.12, \680,ISBN4-04-352801-9)
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