中井拓志『クォータームーン』
中井拓志『quarter mo@n クォータームーン』(角川ホラー文庫)読了。
紹介
1999年9月、岡山県久米原市で起こった奇妙な事件が起こった。学生の自殺や集団リンチによる殺人事件が相次ぎ、その現場には「わたしのHuckleberry friend」というメッセージが残されていた。事件を追う捜査員は、やがて中学生たちの間にひろがるネットワークを発見する。
感想
いとうせいこう『ノーライフキング』の1999年版といった趣の作品。事件に関った人間たちが陥ったコンピュータ・ネットワーク社会の「罠」の怖さは、インターネットを徘徊する人間にとっては他人事でない怖さである。言葉は「ネットの外の人格」が意図せぬ方向に暴走し、ネット内に悪意が蔓延する。「ネット内の真実」にネットの外の世界までもが侵蝕される。
これはネット社会を体験していないと実感できない怖さなのかもしれない。
『SFマガジン』2000年2月号の書評欄(p.266)で東雅夫氏がすごく誉めてましたが、各所の掲示板で匿名・実名・仮名の発言者による批判やら中傷誹謗やらの発言にさらされたアズ……じゃなかったヒガシさんだから当然というか。
作者は自分でページを作ったことはないか、あるいはあまり技術的な知識はないらしく、細かい点では時々首をかしげる表現がないこともない。たとえば、メールアドレスなんかなくたって、どこからアクセスされたかの見当はつくでしょとか、新聞社のサイトへのリンクを貼ったからって自動的にバックリンクされるわけじゃないでしょ(p.330)などなど。
もっともインターネット社会の体験はあるようで、全体的にネット世界の描写はリアル。掲示板のやりとりや、メールでのやり取りなど妙に既視感を覚える。
[1999/12/27]
書誌情報
書名:『クォータームーン』
著者:中井拓志
書誌:(角川書店 角川ホラー文庫,1999年12月,800円,ISBN4-04-346402-9)
Amazon.co.jp: quarter mo@n(クォータームーン) (角川ホラー文庫): 中井 拓志: 本
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コメント
クォータームーンは私も読みましたが、中学生同士のコミュニケーションが決して表にはまともな形で発信されないと言う所が妙に面白かったですよね。
投稿: ゆざいちょ | 2005.12.14 00:21