山田正紀『宝石泥棒』
山田正紀『宝石泥棒』(ハルキ文庫)読了。
感想
書店にずらっと並んでいた(←1999年当時の話)ので、ついつい手を伸ばしてしまったのが『宝石泥棒』。カバーの説明を読み、冒頭を流し読みして驚いた。こーゆー話だったのかぁ。ほとんどファンタジーじゃん。タイトルのせいで、あたしゃずっと『エスパイ』みたいなSFアクション物だとばかり思っておりましたよ。
甲虫を守護神に持つ戦士ジローは、恋する従姉妹ランへの思いをとげるために、女呪術師ザルアー、”狂人”チャクタとともに「月」を求めて旅立つ。という、ヒロイック・ファンタジーの雰囲気をたたえたSF。
ラストは間違いなくSFですが、この作品の「世界」の描写の素晴らしさの前には、ジャンル分けにこだわることなど無意味に思えてしまいます。重要なのは、作品がどれだけ「”ここ”にはないどこか」「”ここ”にはない何か」(=「幻想」)のイメージを描きだしてくれるか。
ファンタジー読みはさっさと本屋に走って、冒頭のむせ返るような熱帯雨林とそこに跋扈する幻獣たちの描写、第二章の草原の中にある奇妙な街の描写を堪能すべし。女呪術師ザルアーの描きかたは、ヒロイック・ファンタジーのお約束という気がしないでもないですが、まあいいでしょう。
書誌情報
著者:山田正紀
書名:『宝石泥棒』
書誌:(角川春樹事務所 ハルキ文庫,1998年10月,987円,ISBN4-89456-461-0)
Amazon.co.jp: 宝石泥棒 (ハルキ文庫): 山田 正紀: 本
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント