レズニック『キリンヤガ』
マイク・レズニック 『キリンヤガ』(ハヤカワ文庫SF)
感想
ようやく読了。
あまりにも居心地の悪い作品だったので、途中まで読んで放り出しておりました。
コリバの一人称で語られるにもかかわらず、その意見に同意できない――気持ちはわからないでもないが、納得はできないという(作者のねらいどおりの)宙ぶらりん状態が、どうにも我慢できなかったのですね。成人男性は遊んで暮らして、女は家畜扱いの世界のどこが「ユートピア」だよ、ふざけんな! ってなもんで。案の定「ユートピア」崩壊の兆しは女たちから始まるわけですが。
私としては、ミモフタもない(笑)【林@不純粋科学研究所さんの感想】に救われましたです。そっかー、コリバってやっぱり誰が読んでも嫌な奴なんだ!
この手の「思慮深く正しく善なる独裁的指導者」ってのは、現実のボランティア活動の場なんかには、結構多いような気がします。ベクトルが違えば革命家になっていたような男じゃないのかな、コリバって。
「空に触れた少女」は私も好きです。
女性なら誰でも程度の差はあれ、こういう体験はあるだろうから、この話に共感するはず。そこがあざといっていえばあざといところで。ただ男性にも妙に受けがいいのは、多くのSF者のセルフイメージであるところの「特異な能力を持ちながら(それゆえに)世界に受け入れられない存在」を扱っているからではないかという気がします。(実際に能力があるかどうかは別の話)。
要するに「空に触れた少女」はSF者の潜在的な選民意識をくすぐるから受けたのだっていったら、石ぶつけられるかなぁ……。
(99.08.16)
書誌情報
書名:『キリンヤガ』
著者:マイク・レズニック 内田昌之/訳
書誌:(早川書房 ハヤカワ文庫 SF 1272,1999年5月,861円,ISBN4-15-011272-X)
Amazon.co.jp: キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF): マイク レズニック, Mike Resnick, 内田 昌之: 本
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