涼元隆一『青猫の街』
涼元隆一『青猫の街』(新潮社)
紹介
SEの青年の友人が旧式のパソコン一台を残して消えた。インターネット、地下BBSを探索し、たどり突いたのは謎の組織「青猫」……。
第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作品。
コメント
システム・エンジニアの生態があまりにあまりにリアル。元SEのワタクシとしては、途中で本をなげだしたくなったくらい。ああ、暗い記憶が……。「これは俺のことだっーーー!」と叫んだSEはひとりやふたりじゃあるまい。今もSEやってるウチの夫にゃ読ませられないとマジで思った。
PC青春サスペンスとして楽しんでいたら、主人公が「青猫」と接触した時点から、いきなり電脳ホラーな展開。これは怖かった。実はこの本を読み終わったあと、封印していた他の人の書評を読もうとパソコンを立ち上げたところインターネットにログインできなくて、一瞬「青猫の呪いか!?」と蒼ざめた。システムを立ち上げ直したらちゃんとログインできましたけど。
「青猫システム」に関しては、ちょっと弱かったかなぁという印象。もう少しファンタジーしているものを予想していたんですが。安田ママさんのところに届いた【謎のメール(3月2日の日記参照)】の方が、ファンタジー的には面白いと思うけど、それだとVMの出番がなくなってしまうか。
作中に『街』と呼ばれるゲームがでてきて、チュンソフトのアレか?と思ったけど、違ったみたい。でもホームレスも出てくるし、ちょっと意識しているかなぁという感じ。
こういう80年代の『ASCII』購読者を対象にしているような作品を面白がるのは、日本ファンタジーノベル大賞の読者より講談社ノベルズの読者だろうになぁ。(レーベルの力っていうのは、結構大きいと思います。)コバルト出身じゃなければ、メフィスト大賞にふさわしい作品だったのにって、惜しがっている人はたくさんいる気がする。
これが面白かった人は古本屋で鳥井可南子『オンラインの微笑』(新潮文庫)なんてのを探してみるのもよいかも。パソ通にはまっている主婦が事件に巻き込まれるというミステリです。 1988年の作で舞台はインターネットじゃなくパソコン通信だけれど、オンラインの世界の絆とその危うさを描いたという点では、『青猫の街』の先駆的作品かもと思います。
(1999.03.28)
著者の涼元悠一(公式サイト)は、現在はゲームのシナリオライターとして活躍中。
この作品が書かれてから5年も経っているので、コンピュータ関連の内容は古くなっているかも。でもオンラインゲームが身近になってきたので、逆にリアリティが出てきたところもあるかもしれません。
(2004.03.22)
書誌情報
書名:『青猫の街』
著者:涼元 悠一
書誌:(新潮社 ,1998.12,\1500+税,ISBN4-10-427101-2)
ネット書店リンク:【bk1/amazon/Yahoo】
書名:『オンラインの微笑』
著者:鳥井 加南子
書誌:(新潮社 新潮文庫 ,1990.1,\388+税,ISBN4-10-119611-7)
ネット書店リンク:【bk1/amazon/Yahoo】
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