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恩田陸『球形の季節』

恩田陸『球形の季節』(新潮文庫)

球形の季節

感想

四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた……。
田舎町の閉じた世界を覆う噂とその地に密かに伝わる伝承、やがて明らかになる秘密。

コメント

題材はとっても魅力的なのですが、どうにも「とっ散らかかった」小説だなぁというのが感想。

「とっ散らかった」印象を与える要因のひとつは、主役級の登場人物が複数いて、しかもそれぞれの書き分けができていないことにあると思います。女の子の側は、普通のイナカの子、外からきた子、超能力少女と、なんとなく見分けが付きますが、男の子の方は最後まで、何人の登場人物がいたのか把握できませんでした。
書き分けができないのなら、せめて「ふつう、ニヒル、博士/お笑い、ごついの、ちいさいの」という戦隊物のお約束を利用して欲しいものだと思ってしまいましたです。キングは、このお約束を上手に利用してますね。

噂が町全体に広まるほどの「閉鎖された場所」を描きながら、そういった状況に付きものの「悪意」がすっぽり抜けているのも気になりました。悪意ある人物というのは、確かに登場するのですが、そういった顕在化された悪意ではなく、町の人々すべての心の底に淀む善意と紙一重の「悪意」。「噂」が広がるためには、そういった目にみえない「悪意」が不可欠だと思うんですが、そういった要素がないなぁ……と。
(だいたいイナカの人間は「他人の不幸は蜜の味」だと思っているんだから、行方不明になって戻ってきた女の子を素直に受け入れるわけないじゃんと、イナカに住んでいてそのイナカが大嫌いな私なんかは思います。)

噂と事件と伝承と「あの場所」が、ジグソーパズルのようにきっちり納まったなら良かったんですけどねぇ。伏線の張りかたもイマイチだし。やっぱり構成力が欠けているのかな?
恩田陸は短編や、『光の帝国』や『三月は深き紅の淵を』といった連作短篇のほうがよいと思います。

(1999.02.03)

書誌情報

書名:『球形の季節』
著者:恩田陸
書誌:(新潮社 新潮文庫,1999年2月,514円+税,ISBN4-10-123412-4)
ネット書店リンク:【bk1/amazon/Yahoo

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