高野史緒『カント・アンジェリコ』
高野史緒『カント・アンジェリコ』(講談社)
内容紹介
ヨーロッパ全土に電話網が張り巡らされ、電飾まである18世紀初頭のパリを舞台に、カストラート(去勢歌手)に国を失った王女、女王陛下の国からきた謎のご隠居(笑)、電気屋の枢機卿、ハッカー崩れの殺し屋などなどが跳梁跋扈するお話。クライマックスに至っては、オペラの舞台で文字どおりのディオニッソス饗宴が繰り広げられる。
コメント
前々から気になっていた本で、手を伸ばすきっかけになったのは、インターネットでの書評だった。初めて大原まり子やディプトリー・ジュニアの『接続された女』を読んだときの興奮(20年も前のお話です)を思い出す面白さだった。
男性は仕掛けの方が気になるみたいですが、女が気にするのは、カストラートと音楽とネットワーク・ラブのことだ。
P.219のウラニア王女がルチフェロ(と、ミケーレ)に語り掛ける言葉にたいていの女性は同意することと思うんだけど。
そう私たちはそうであるあなたたちを受け入れます。だけど……問題はそいういうことじゃなくて……あなたたちが、それが如何に問題でないかを決して信じようとしないことです……
私には音楽方面の知識があまりないので、作者が仕掛けた引用の元ネタがあまりピンとこなかったのが残念。『トゥーランドット』と『魔笛』と『忠臣蔵』は判りましたけど。それから、なぜか『トーマの心臓』のエーリックがちらちらします(「チャオ。こちらは天使。あなたはどなた?」)
あと笑ったのは、p.126。座右の銘にしようかな。
彼の詩に感動しないからといってその凡才をくさす前に、読み手としての己の凡庸さに思いを馳せてみるのも、そう悪いことではないだろう。
英国の謎のご隠居、レスリー卿が好み。(爺さまが好きなの)007についてちょっとだけ言及されるので、ショーン・コネリーかなと思いましたが、ローレンス・オリビエの方がイメージかも。
(1997.06.21)
2003年12月現在、ハードカバーは絶版で入手が困難。文庫化の話はどうなったかなぁ。
書誌情報
著者:高野史緒
書名:『カント・アンジェリコ』
書誌:(講談社 ,1996年8月,1748円+税,ISBN4-06-208327-2)
ネット書店リンク:【bk1/amazon/Yahoo】
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