マクドナルド『黎明の王 白昼の女王』
イアン・マクドナルド『黎明の王 白昼の女王』(ハヤカワ文庫FT)
内容紹介
三部構成になっていて、第一部は、1913年に一人の少女が森で妖精と出会い失踪するという事件を日記や書簡、新聞記事などで構成し、第二部は、1930年代のダブリンの少女が妖精の国へ連れ去られようとするのを、彼女の「守護者」と父親が阻止しようとする話。第三部では、現代を舞台に第二部の主人公の少女の孫が彼女を連れ去ろうとする"ファーガス"(これが妖精の正体らしい)と戦う。
コメント
妖精物語っぽい表紙に騙されてはいけない。これは、フィリップ・K.ディック記念賞受賞作なのだ。そのつもりで、読み始めること。
いかにも男流SF作家の書いたファンタジーであったが、最後に至って立派に癒しのファンタジーとなった。途中で投げてはいけないですね。確かに90年代を代表する名作になるかもしれない。
第二部の文体が変だと思ったら、ジェイムズ・ジョイスの文体模写をやっているかららしい。また、ここで出てくる二人の浮浪者は『ゴドーを待ちながら』のパロディだと思う。一瞬、『ランボー』の姿もよぎる。
基本アイデアは『ミサゴの森』(私は未読)のいただきではないか、という指摘もあるようだが、
リミックスだ。すべてがリミックスなんだよ。分解し、分析し、サンプリングし、ふたたびいっしょにする。 (p.498)
なんて書いているところを見ると、意識的にやっているのだろう。
(1997.05.27)
書誌情報
著者:『黎明の王白昼の女王』
書名:イアン・マクドナルド/著 古沢嘉通/訳
書誌:(早川書房 ハヤカワ文庫 FT 203,1995年2月,980円+税,ISBN4-15-020203-6)
ネット書店リンク:【bk1/amazon/Yahoo】
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント